2011年7月28日木曜日

フランス人はバカンスのために働く

フランス人とバカンスとの関係は一般に知られているよりもすごいと思う。フランスでは有給休暇の5週間を消化することは国民の権利であり義務である。これにはパートタイムの人も含まれる。実際、フランス人の有給の平均取得日数は37日であり93%の人が満たしている。出すまでもないが日本のデータはひどいものである。平均18日ある有給休暇の消化の平均は8日で完全に使っている人は6%にすぎない。

フランスでは、この5週間に加えてクリスマス、イースターとかの休暇が別にあり、それらを合計すると2ヶ月半の休みになる。フランスにいたH君は「フランス人は1年の半分しか働いていない感じですよ」といっていた。フランス人は残業をしないので年間の労働時間は日本人よりかなり短い。数年前には、週35時間労働でもよいとする法律ができた。ワークシェアするためにである。日曜日の過ごし方に休みに対する考え方が典型的に現れている。フランスでは日曜日に開いている店はほとんどない。日曜日は自宅でゆっくり過ごす日である。

夏のバカンスシーズンになるとパリにいるのはほとんど海外から来た観光客である。休暇に入って全員が一斉に出かけると交通の大渋滞が起こるので、地区によって時期を前半、後半と決める。近所のパン屋さんがすべて閉まると不便なので近所の店で話し合って休みが重ならないようにする。日本では年中無休が売りであるが、フランスではレストランもお店もバカンスで閉まる。医者もバカンスをとって病院が閉まるので夏に病気にならないほうがよい。

フランス人は買い物が好きでなく、また、あまり新しいものを買わない。日本人がなぜあんなにパリで買い物をするのかフランス人にとって理解できないだろう。フランス人の節約はバカンスのためでもある。バカンスの楽しい過ごし方こそが人生であるという感じである。どこに出かけるかは多様である。留守の親戚の家とか、友人の別荘とか、山のロッジとかに家族で車で出かけるとか。わたしの知り合いのエマはクルーズ船を持っていて地中海の島巡りとかをしている。バカンスとは文字通り「からっぽ」になることである。バカンスの間は、自然を楽しんだり、スポーツをしたり、趣味のことをして過ごすようである。したがって現地ではお金を使わない。日本人はどこかに旅行したら現地のお土産を買ってきて配るが、フランスにはそのような習慣はない。

では他の国ではバカンスはあるのだろうか。フランスほどでないが、オーストラリア、米国、カナダで見聞きしたところでは1-2週間ほどのバカンスを取っていた。バカンスから戻ってきたら実験のベンチが占領されていたということもあった。もちろんフランスでもすべての人がバカンスを楽しめるわけではないだろう。ある本に書いてあったデータによると、バカンスに行けない人が3割以上いて、高齢者、農業関係者、低所得者の人であるという。

日本では有給休暇の消化をなんとか増やそうという動きがあるが、余裕がある大企業は別にしてまったく改善されていない。わたしも有給休暇をほとんどとったことがない。子どもがいる家族が2週間の休暇をとろうとしても中高生の夏休みにはいろんな行事があり難しい。フランスでは休暇期間中には何もない。日本では何よりも費用がかかりすぎる。日本では混雑時期に格安チケットがなくなるが、北欧では皆が旅行する時期に安くするということを聞いたことがある。日本人のゴールデンウィーク、お盆、年末年始の休みというのは「バカンス」とは言えない。また、パック旅行も「バカンス」ではない。日本で「バカンス」を取れるのは大学生か定年退職後の人に限られるのではないだろうか。

cassis